◆第30回秋華賞・G1(10月19日、京都競馬場・芝2000メートル、良)
第30回秋華賞・G1は19日、京都競馬場で行われ、2番人気の桜花賞馬
エンブロイダリーが、逃げた
エリカエクスプレスを半馬身差で差し切り、牝馬3冠最終戦を制した。桜花賞との牝馬2冠は史上13頭目(牝馬3冠馬含む)。導いたクリストフ・ルメール騎手(46)=栗東・フリー=は歴代最多4勝目で、史上初の2度目の連覇を果たした。1番人気に支持されたオークス馬の
カムニャックは16着に沈んだ。
秋めいた淀のターフに、鹿毛の馬体が華麗に舞った。2番手で迎えた最後の直線は、逃げ切りを図る
エリカエクスプレスとのマッチレース。「今日は結果を出したかった」。ルメールは右へ左へステッキを持ち替え、
エンブロイダリーにこん身のゲキを送る。それに応えるように桜花賞馬は闘争心を燃えたぎらせた。持ち味である跳びの大きなフットワークで、一完歩ずつ差を詰める。ゴール前で力強くかわし去り、半馬身差で牝馬2冠のゴールを駆け抜けた。
昨年の
チェルヴィニアに続き、自身2度目の連覇で歴代最多の4勝目を挙げた鞍上は「馬の状態は完璧で、勝つ自信がありました。ラスト200メートルはずっといい脚を使ってくれた。届いて良かった」と笑顔。ファンからの「クリストフ、ありがとう!」の声に、右拳を強く握りしめて応えた。
勝負をかけたのは向こう正面だった。2角を6番手で通過したが、武豊が手綱を執る逃げ馬がペースを緩めるのを素早く察知しポジションを押し上げた。「ペースが落ち着いたので、外からゆっくり上げていった。前半はすごく冷静。秋から落ち着いていますね」とルメール。オークスは折り合いを欠いて敗れたが、精神面の成長を実感していたからこその仕掛けだった。桜花賞と同じ栗東滞在でも、陣営は慣れを見込み、2週前ではなく、美浦でルメールが手綱を執った1週前追い切りを終えてから入厩。細部までこだわった調整も奏功した。
現3歳世代から供用が開始された
アドマイヤマーズ産駒は2000メートルを超える距離で勝ち星がなかったが、距離の不安を覆すパフォーマンスで最後の1冠を制した。「2000メートルはぴったり。将来的には2400メートルもいけるかもしれない」とルメール。可能性が大きく開く勝利となった。
牝馬3冠最終戦を制し、逆転で3歳牝馬の頂点に立った。次なる相手は同世代の牡馬、古馬の一線級といった強敵たちだ。開業2年目の森一調教師は「まだまだ成長途上。この先完成されていくと思うので、強い
エンブロイダリーをお見せできれば」と力強く宣言。2冠という栄誉を手に、世代を超えた最強の座をつかみにいく。(山本 理貴)
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エンブロイダリー 父
アドマイヤマーズ、母ロッテンマイヤー(父クロフネ)。美浦・森一誠厩舎所属の牝3歳。北海道安平町・ノーザン
ファームの生産。通算8戦5勝。総獲得賞金は3億3833万1000円。主な勝ち鞍は25年クイーンC・G3、桜花賞・G1。馬主は(有)シルクレーシング。