内から抜け出そうとするダノンシャーク(左)に、抵抗するフィエロ(左から2頭目)。100メートルの叩き合いだった(右はグランデッツァ)
今年のマイルCS・G1(11月23日、京都競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・14年の1着
ダノンシャーク(岩田康騎乗)と、2着
フィエロ(福永騎乗。当時は騎手、現在は調教師)の大激戦を振り返る。8番人気の
ダノンシャークがイン強襲から、
フィエロとの大接戦を鼻差で制し、念願のG1初制覇。完璧なレース運びをしたのに2着だった
フィエロにとっては、悔しい敗戦となった。
すべてがうまくかみ合っていた。スタートが決まり、好位のインに収まった。「イメージ以上の道中」と福永。ストレスを与えることなく
フィエロをリードした直線。追い出すタイミングだけを計っていたが、そこでも自然と前が開く。態勢を崩すことも、ちゅうちょすることもなく馬群を割って一気に先頭へ。
もう鞍上は勝利を確信していたはずだが、道中は3馬身後ろにいた
ダノンシャークが馬群を縫い、最内から忍び寄ってきた。封じ込めに向け、こん身の力で追うが、想像以上に速い接近。100メートルに及ぶ馬体を合わせての叩き合い。耐えて、しのいできたが、最後の1完歩で5センチだけかわされた。勝ったのは8番人気の
ダノンシャークだった。
「最悪や。何もかもがスムーズで、うまく行き過ぎた。結果だけが伴わなかった」。完璧に運んでの鼻差2着を受け入れられない。しかも、勝ち馬は昨年は自身が騎乗して3着と惜敗し、前走の手綱も執っていた6歳馬。「よりによって
ダノンシャークとは…」。悔やんでも悔やみきれない。藤原英調教師も「100点だったが、相手がそれ以上だった」と、力を出し切っての敗戦を苦笑いで振り返るしかなかった。
ダノンシャークは16年に競走馬を引退し、種牡馬となった。代表産駒には
タイキドミニオン(ダートで2勝)、
シャークスポット(芝で1勝、ダートで2勝)などがいる。