国内の女性騎手で歴代最多の通算1382勝を挙げた宮下瞳騎手=名古屋=が11月26日、名古屋競馬場で現役最後のレースを終え、引退セレモニーが行われた。20日に令和7年度第2回調教師免許試験に合格したことがNAR(地方競馬全国協会)から発表され、12月1日付で調教師に転身する。騎乗後に引退会見が行われ、思いを語った。今回は前編。
―現役最後の騎乗を終えて、今の気持ちは。
「正直、ホッとしました。レース中にアク
シデントがあって、(3Rのレース中に)手綱が切れてしまったのですけれど、とりあえず無事に騎乗を終えられて、よかったです」
―調教師試験の合格が発表され、引退レースまでの胸の内は。
「特にはなかったのですけど、いつも以上に愛馬たちと一緒に楽しみながらレースをできたらいいなと心がけていました。(現役最後の日は)1着になることはできなかったけど、馬としっかりコンタクトを取ってレースを楽しむことができました」
―ラストデーは5、2、11、8、2、7着だった。現役最後の騎乗について。
「本当に実感がなくて、最後という感じはしていません。でも、思い返せば、本当に最後というのを感じるので、気持ちがギュッとなる思いはあります」
―調教師を目指そうと思い始めた時期、理由は。
「今年に入って、そういう気持ちが少しあるところで、春に前十字靱帯を痛めてしまいました。それから自分が100%で乗れない部分があったので、調教師を目指してみようかなと思いました。加えて、長男である息子(小山優心さん)が『騎手になりたい』と話してくれたので、息子をサポートしたいなと思いました。息子と一緒に乗ることが夢だったのですが、今の私の体の状態では、それはできないかなと思って調教師になることを決めました」
―調教師に目指し始めてから、合格するまでの道のりについて。
「勉強は死ぬほどしました。すごくしました。食事のとき以外はずっと勉強していました。主人をはじめ、息子2人には本当に申し訳ないというか。どこにも出かけず、夏休みもどこも出かけることなく、ずっと勉強していました。子どもたちをどこへも連れて行けなかったので、そこは申し訳ないと思っています。調教師の免許を取ったので、どこか連れて行けたらいいなと思っています」
―勉強をしているとき、感じたことは。
「騎手免許復帰のときにも勉強はしたのですけど、調教師となるとまた勉強する部分が違います。馬に関する部分、法規に関する部分だったり、馬の体、病気、(蹄)鉄。範囲が本当に広くて覚えるのが大変でした」
―一発合格だったが、手応えはどうだった。
「正直、自信はなかったです。一次試験は学科でしたけど、本当に自信はありませんでした」
―合格が発表されたときの気持ち。
「めちゃめちゃ、うれしかったです。本当にホッとしました。これで子どもたちを、いろいろ連れて行ったり、いろいろしてあげられるなと思いました」
―川崎で2000勝超の今野忠成騎手、山崎誠士ら8人が調教師試験に合格。一緒に受かった方との付き合いは。
「5人で那須の学校に行って調教師の勉強を一緒に3週間ほどさせていただきました。お互いに分からない部分を教え合ったりしました。私の場合だと論文を書くのが初めてだったので、そういう部分で本当にいろいろ教えていただくことがあって。他の4人がいたので合格できたと思っています」
◆宮下 瞳(みやした・ひとみ)1977年5月31日、鹿児島市生まれ。48歳。95年10月に名古屋でデビューし、11年8月に引退。男児2人の出産を経て16年8月に現役復帰。24年春に女性騎手初の黄綬褒章を受章。25年秋に園遊会の招待を受けて出席。女性騎手で国内最多の地方通算1382勝(他に韓国で56勝)。夫は元騎手の小山信行さん。