冬のダート王決定戦「第26回チャンピオンズカップ」の最終追い切りが3日、東西トレセンで行われた。美浦では4連勝中の3歳馬
ナルカミがWコースで抜群の伸びを披露。23、24年の当レースを
レモンポップで連覇している田中博康師(39)の工夫をこらした調整で心身ともに仕上がった。先週のジャパンカップでゴール後に落馬した戸崎圭太(45)も大事に至らず騎乗が決定。史上6頭目の3歳馬制覇へ態勢は整った。同レースは4日に出走馬と枠順が確定する。
そこには大人になった姿があった。スムーズに馬場入りできない、鞍上の指示に反抗する。
ナルカミに転厩当初の幼さはもうない。変わりつつある愛馬の姿に田中博師は「止まる。前に出ない。回る。かつてはそういうところもあった」と当時を振り返りつつ、「今は徐々に解消している。良くなっている」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
最終リハは精神面の成長が顕著に表れた。Wコース併せ馬。僚馬
アッシュルバニパル(4歳オープン)を3馬身追う形でスタートした。序盤はゆったりしたラップだったが、折り合いがついてリズムも崩れていない。3角過ぎからは鞍上の意のままスムーズに加速し、コーナリングも文句なし。直線は外で必死に追われる僚馬に対し、終始抜群の手応え。ラスト1F(200メートル)11秒2と鋭く伸び、余力十分に併入した。
テン良し、中良し、しまい良し。いつもは辛口なトレーナーも「狙い通りの調教ができた」と納得顔。続けて「体つきが大人になった。ボリュームが出て、ダート馬らしくなってきた」と肉体面の変化も口にした。先週の
ジャパンCで落馬したが大事には至らず、予定通り騎乗する戸崎もパートナーの走りを確認。「いい動きだったと思います」と師に続いて高く評価した。
経験が生きている。田中博師は過去に
ナルカミと同じ
サンダースノー産駒を管理。「気持ちが後ろに行ってしまう、という印象です」。産駒の特徴を知っていたからこそ、気性改善への筋道が立った。普段の歩き運動から気持ちが前向きになるよう意識。それでいて高ぶらないように「攻め込まず、ストレスをかけず」を徹底。陣営のたゆまぬ努力で
ナルカミは変わった。
破竹の4連勝中。前走ジャパンダートクラシックは、
ハイラップを刻み圧逃Vと同世代に敵はいない。唯一、敗戦を喫した左回りで古馬との対戦。決して楽な条件ではないが、この大きな壁を越えれば海外挑戦も見えてくる。トレーナーが「心肺機能だけなら
レモンポップより上」と、かつて手がけた名馬を引き合いに出して称賛する素質馬。馬名の由来は雷の神を意味する鳴神。史上6頭目の3歳馬戴冠を成し遂げ、日本の、そして世界のダート界に雷鳴をとどろかす。
《田中博師、偉業3連覇なるか》田中博師は23&24年の当レースを
レモンポップで連覇。今年、
ナルカミで優勝なら
グレード制が導入された84年以降、藤沢和雄元師(02〜04年天皇賞・秋、同有馬記念)、安田隆行元師(11〜13年スプリンターズS)に続く史上3人目のJRA同一G1・3連覇となる。気鋭のトレーナーは偉大な先人たちに続くことができるか。