“策士”が勝負に出た。いかにキャリアは16戦と浅くても、
フィエロは重賞未勝利のまま6歳の秋に。良く言えば完成期だが、悪く言えば残された時間はそれほど多くない。一世一代の走りを引き出すために、藤原英師が選んだのは攻めの姿勢だった。
 それが集約されたのが栗東坂路で披露した最終リハだ。併せた
サクセスグローリー(4歳1000万下)を残り1Fでとらえると、軽く合図を送っただけで一気に突き放す。4F52秒2-38秒4-12秒2の数字も極めて優秀で、ゴールを迎える時には4馬身もの差がついていた。
 もともとケイコは動くタイプだが、いつになく備わっていたのが荒々しさ。調教役を務めた鮫島良の言葉が、それを裏付ける。「今まで乗った感じとは違いました。馬が変わっています」。以前は乗りやすい馬という印象だったが、前半から手綱を抑えるのに苦労。「馬のつくり方が違うのでしょう。気持ちが乗っています」と大きな変化を口にする。
 見守った藤原英師も納得の笑みを浮かべた。「能力的にも身体的にも今が
ピークに近い。自信を持っていける。去年は悔しい思いをしたし、何としてもという気持ち」と、鼻差の2着に泣いた昨年の雪辱に燃えている。
 騎乗するM・デムーロも意気込みは十分。「前走(スワンS2着)で初めて乗ったけど、すごくいい馬。実戦を使って、もうひとつ良くなると思う。関西(京都、阪神)のGIはまだ勝っていないので頑張ります」。今年の皐月賞&ダービーを制した
ドゥラメンテを筆頭に、荒々しい馬ならお手のもの。勝負仕上げを施された
フィエロが、頼れる名手を背に初戴冠へとまい進する。