平成9年の有馬記念を差し切ったシルクジャスティス(右)。左からエアグルーヴ、マーベラスサンデー(撮影:下野雄規)
この年人気を集めたのは3頭。宝塚記念で悲願のGI制覇を達成し、その宝塚記念から骨折休養明けで挑むマーベラスサンデー、天皇賞・秋でバブルガムフェローをねじ伏せ、続くジャパンカップでも2着と充実期を迎えた
エアグルーヴ、そして二冠牝馬の
メジロドーベル。3頭が単勝5倍以下の人気を集め、そこから少し離れた4番人気がシルクジャスティスだった。
カネツクロスがハナを切り、マイネルマックスが2番手。
エアグルーヴは絶好の5番手を追走し、
メジロドーベルは中団から進む。武豊・マーベラスサンデーは、後方からの競馬を選択し、さらにその後ろにシルクジャスティス。
3〜4コーナーで先行勢が早々と後退していく中、
エアグルーヴは馬群の中から絶好の手応えで順位を押し上げ、マーベラスサンデーも外から一気に進出。
メジロドーベルも仕掛けて上がっていくものの、外からマーベラスサンデーに被されると手応えを無くし黄信号が灯る。
先に抜け出した
エアグルーヴに外から迫るマーベラスサンデー。オリビエ・ペリエと武豊、名手の意地と意地がぶつかり合った叩き合いが続く。マーベラスサンデーが
エアグルーヴを競り落としたところに、さらに外からシルクジャスティスが襲いかかる。王者の底力でマーベラスサンデーも抵抗するが、シルクジャスティスが頭差交わしてゴールに飛び込んだ。
ダービーは上がり最速を繰り出しながら2着。1番人気に推された菊花賞はスムーズさを欠き5着。世代屈指の能力を認められながらもタイトルには手が届かずにいたシルクジャスティス。その歯がゆい状況を主戦の藤田伸二は「悔しくて悔しくて、頭が痛くなるほど悔しくて…」と表現した。まさに藤田の執念がもたらした、アタマ差の逆転劇であった。