南関東の短距離路線を牽引したノブワイルドが引退・種牡馬入り(撮影:高橋華代子)
1月13日に船橋競馬場で実施された船橋記念(優勝馬キャンドルグラス)で、衝撃が走りました。左海誠二騎手が手綱を取った2番人気ノブワイルド(浦和・小久保智厩舎)が、最後の直線で競走中止。直後の診断では、左前球節完全脱臼とのことでしたが、厩舎へ帰りました。
「レントゲンを撮ったところ、不幸中の幸いで、繋靭帯の損傷は激しいですが、骨折はなく、中心の靭帯もしっかりしていました。4コーナーを回った時には勝ったかなと思いましたが……誠二(左海騎手)もよくあそこで止めてくれました。ワイルドは最後まで本当によく頑張ってくれました」(小久保調教師)。
ノブワイルドはTUBEの前田亘輝オーナーの所有馬としても知られ、中央で1勝を挙げると、3歳夏から浦和の小久保厩舎所属として、南関東の一員になりました。
絶対的なスピードを持ち合わせていましたが、体が弱く、2度の骨折などを発症しながらも、じっくりゆっくりと育てられてきた現役生活。
6歳のオーバルスプリントで念願の重賞初制覇を飾ると、7歳では習志野きらっとスプリント、プラチナカップ、オーバルスプリントと、一気に重賞3連勝。最後の重賞勝ちとなったのは、8歳で連覇した習志野きらっとスプリントで、夏場の重賞を通算5勝。
当初から、引退後には前田オーナーが所有し種牡馬入りすることは決まっていたそうで、1月20日正午に静養していた茨城の牧場を出発し、21日早朝に新天地となる北海道の白馬牧場(新冠)に到着したそうです。
白馬牧場さんのお話では、歩様の問題もなく、1週間ほどのんびり過ごして準備が整い次第、種牡馬としての仕事を開始させていく予定ということです。
「余計な動きをしない頭のいい仔で、今年9歳になっても闘争心の衰えないのがこの仔の良かったところです。芯が強くて本当にすごい仔でした。何とか北海道へ送ることができました。1歳のサマーセールで出会ってから8年余り、感慨深いですね。ワイルドは種馬としても成功してくれると思っています」(小久保調教師)。
ノブワイルドの生きる力と関わる皆さんのあきらめない気持ち。救われた命を今度は新しい命へと、紡いでいく仕事が始まります。
【ノブワイルド】
9歳牡馬
馬主:前田亘輝様
生産:城地清満様(新ひだか町)
父:ヴァーミリアン、母:コウエイベスト、母父:アンバーシャダイ
39戦13勝2着5回3着4回(オーバルスプリント2勝、習志野きらっとスプリント2勝、プラチナカップ)
(取材・文:高橋華代子)