◆第42回
ジャパンC・G1(11月27日、東京・芝2400メートル、良)
第42回
ジャパンCは27日、東京競馬場で行われ、3番人気の
ヴェラアズール(ムーア)がデビュー22戦目のG1初挑戦でいきなり
ビッグタイトルを獲得した。デビューから2年間ダート路線を歩んだが、今年3月に芝転向。6戦連続で上がり最速の豪脚を披露し、秘めた才能が完全開花した。今秋はG1・7戦連続で新たなG1ホースが誕生。騎手時代の01年
ジャパンCで3着(ナリタトップロード)に敗れた渡辺薫彦調教師(47)=栗東=も、調教師としてG1初勝利を挙げた。
世界のラ
イバルと覇を競った華やかな表彰式で、格別な思いがこみ上げてきた。
ヴェラアズールでG1初制覇を果たした渡辺調教師は、万感の表情でファンの拍手を浴びた。「開業して 7年、いろいろいい ことも悪いこともありましたが、調教師冥利に尽きます」。デビュー22戦目の愛馬は、重賞も前走の京都大賞典で初制覇したばかり。それでも世界の名手とのコンビを信じ抜いた先に、悲願の栄誉が待っていた。
ムーアを背に馬群の中団につけ、じっくりと脚はたまっていた。直線は馬場の悪くない内に各馬が殺到。何度も前が壁になりながら、残り200メートル付近で進路が開くと鋭くひと伸びした。最後は外の
シャフリヤールに3/4馬身差をつけた鞍上は「前が開いた時に勝ちを実感した。内側を走ったデメリットはなかった」と冷静そのもの。対照的に渡辺師は「気がついたら立ち上がって興奮していた」と振り返るほどの白熱の接戦だった。
もともと大型馬だったうえ、デビュー前の育成段階で骨折。脚元の負担を考慮し、3歳春のデビューから一貫してダートを使ってきた。だが一族には伯母の08年オークス馬
トールポピーなど芝の活躍馬も多く、指揮官は適性も感じとっていた。今年1月の濃尾特別7着後に転向すると、この日も含めて芝の全6戦で上がり最速の末脚を発揮し、4勝。「こちらの想像を超えてくる走りをする。まだまだ良くなっていくと思う」と驚くばかりだ。
渡辺師は騎手時代、99年の菊花賞馬ナリタトップロードと日本ダービー(2着)や
ジャパンCなど府中のG1に挑んだものの、頂点には届かなかった。トレーナーとしてついに栄冠をつかんだが、「何度か悔しい思いをしたけど、ジョッキーと調教師とは違うので」と視線を先に向けた。一気に中長距離界の中心を仕留めた一戦。胸に秘めた
プライドと執念が報われた。(坂本 達洋)
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ヴェラアズール 父
エイシンフラッシュ、母ヴェラブランカ(父クロフネ)。栗東・渡辺薫彦厩舎所属の牡5歳。北海道白老町・(有)社台コーポレーション白老
ファームの生産。通算22戦6勝。総獲得賞金は5億4968万円。主な勝ち鞍は22年京都大賞典・G2。馬主は(有)キャ
ロットファーム。