98年の金鯱賞を圧勝したサイレンススズカ(撮影:高橋正和)
“思い出の
サイレンススズカのレースは?”という問いに対する答えは人それぞれだろう。唯一のGI制覇となった宝塚記念、エルコンドルパサー&グラスワンダーの4歳2強を撃破した毎日王冠、そして悲劇の結末となった天皇賞(秋)…。しかしながら、最もインパクトがあったレースを聞かれれば、金鯱賞を挙げる人が抜けて多いのではないだろうか。
4歳時は気性面の若さが目立ち、ダービー以降は連敗が続いていた
サイレンススズカ。しかし、12月の香港国際Cが転機となる。このレースで武豊騎手と初めてコンビを組み、残り100mまで先頭をキープして5着に善戦。明けて5歳となり、年明け初戦のバレンタインSで久しぶりの勝利を手にすると、続く中山記念、小倉大賞典と3連勝。行く気に任せて逃げる
スタイルで素質を開花させていく。
そして迎えたのが金鯱賞だった。このレースには前年の菊花賞を制したマチカネフクキタル、前走のアルゼンチン共和国杯まで4連勝中のタイキエルドラド、重賞2勝を含めて5連勝中のミッドナイトベットなど、かなりの強豪が集っていた。そんな中、
サイレンススズカは前半1000m58秒1の大逃げを打つ。これはさすがに脚が上がるのでは? そんなファンの心配を他所に、脚色は全く衰えない。4角を回っても後続との差が縮まるどころか、逆に突き放し、2着のミッドナイトベットに1秒8差の大差をつける圧勝を演じたのだった。
2013年に中京競馬場の開設60周年を記念して行われた「思い出のベストホース大賞」で、
サイレンススズカは2位オグリキャップに
ダブルスコアをつける“圧勝”で1位に選ばれた。中京競馬場には
サイレンススズカ広場があり、馬名と現役時代の勇姿が刻まれたモニュメントもある。98年の金鯱賞はまさにGI以上のインパクトを残したレースだったのだ。あれから四半世紀が過ぎたが、これからも“伝説の一戦”として語り継がれるに違いない。