キャロットC

ドゥレッツァ英国遠征−日本競馬の新たな道になるか ジャパンCへのビジョン見据え日本の誇る調教馬が世界に挑む

2024年08月20日 06:00

 現地調整中のドゥレッツァと尾関師(撮影・平松さとし)

 新たなモデルケースになるかもしれない。21日に行われるインターナショナルS・G1(英ヨーク、芝2050メートル)に昨年の菊花賞馬ドゥレッツァが参戦する。日本調教馬が同レースに出走するのは、05年ゼンノロブロイ(2着)、19年シュヴァルグラン(8着)に続いて3回目となる。

 夏のこの時期の海外遠征は、これまであまり見られないパターンだ。しかし、ドゥレッツァ陣営にははっきりとしたビジョンがある。尾関師は「秋の目標としてジャパンC(11月24日・東京)があります。そこに向けてのレース間隔なども踏まえ、いろいろなものをオーナーと協議した上で“行こう”ということになりました」と説明する。

 古馬がジャパンCを目標にする際、天皇賞・秋をステップレースに選ぶことが多い。ただG1で厳しい競馬になる上、レース間隔は1カ月しかなく、ベストの選択肢とは思えない。レース間隔をあけるとなると、札幌記念、オールカマー、京都大賞典のG2が候補となるが、舞台設定などを踏まえると妥当ではない…。

 そこで選んだのが英国G1だ。インターナショナルSが開催されるヨーク競馬場は左回りで、2050メートル戦は向正面からスタートする。最初に緩やかなコーナーがあり、その後はしばらく真っすぐに進み、4角を回ると約900メートルの直線を迎えるのだが、ほぼ平たんで欧州コース特有のタフなものではない。

 師は「左回りでヨーロッパの競馬場にしてはコースの起伏が小さく、日本に近い部分もあるのかなと思っています」と分析。欧州における海外遠征レースの代表格である凱旋門賞が行われるパリロンシャン競馬場に比べ、日本馬にとっては力を発揮しやすい舞台と判断できる。

 日本なら暑い夏にレースに向けての調整を行うことのリスクはあるが、同競馬場があるノースヨークシャー州は、夏でも気温は20度前後で25度を超えることはめったにない。しかも1着賞金は70万8875ポンド(約1億3550万円)と日本のG2の倍近くあり、加えて、その後にジャパンCを目指すなら、さらなるメリットとしてJRAの褒賞金がある。英インターナショナルSはジャパンC対象の『指定外国競走』の一つで、優勝馬は日本調教馬であっても褒賞金の交付対象となり、ジャパンCの着順(1着200万ドル、2着80万ドル、3着50万ドル、それ以外は10万ドル)によって褒賞金を受け取れる。

 それだけではない。尾関師は「結果が出ればだが、種牡馬としての価値も上がるレースですからね」とうなずく。魅力的な部分が多くある。

 いいことばかりを挙げているが、そこは海外遠征。簡単なものではないし、デメリットもある。中でも欧州遠征は日本調教馬にとっては鬼門となっている。ただ、日本競馬は確実に進化しており、ドゥレッツァ自身も90年メジロマックイーン以来となる重賞初挑戦で菊花賞を制した逸材だ。「すごいメンバーになるけど、この馬の自在性を生かし切れればいいですね」と尾関師。結果も大事だが、チャレンジすることに意味がある。今回の英国遠征が、日本競馬にとっての新たな道となる可能性はある。(デイリースポーツ・小林正明)

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