日本ダービー2025が行われる東京競馬場に店を構える耕一路(c)netkeiba
3歳世代最強決定戦を“食”で支える。6月1日に東京競馬場で行われる日本ダービー(3歳牡牝・GI・芝2400m)。昨年8万人超が来場した大一番の熱気は芝コースやパドックにとどまらず、場内の飲食店にも押し寄せる。そんな今回は、競馬場グルメグランプリでNo.1に輝いた「モカソフトクリーム」を販売し、東京・中山競馬場に店を構える「耕一路」に注目。春GIを飾る大レースを前に、同店に舞台裏を伺った。
耕一路はドリンクや軽食をメインに販売する店舗で、優しいコーヒー風味とミルキーな口当たりが特徴の「モカソフトクリーム」が看板商品。コーンやカップでの提供のほか、コーンフレークを敷いた「モカチョコサンデー」、各種ジュースと組み合わせたフロートなど、豊富なアレンジで多くのリピーターを生み出している。
元々は喫茶店として戦前に銀座で創業した耕一路。渋沢栄一の孫にあたるオーナーの縁から競馬場内への出店が決まり、東京競馬場オープン当初から営業を続ける数少ない店舗のひとつだ。歴史は70年を超え、長きにわたって競馬ファンに親しまれるほか、喫茶店として文豪や文化人にも愛された背景も持ち、かつては小説にその名が登場したこともある。
日本ダービーについて話を聞くと、やはり一年で最もお客さんが詰めかける一日になるそう。「まずはお客様に売り切れのご迷惑がかからないように」と語る。ただ、ソフトクリームを作る機械は実は1台のみで、大レースといえど販売できる量には限りがあるという。
場内屈指の人気店ということもあり、店舗に置ける最大量の機械を使用しているが、こだわるのは品質。「機械を休ませるタイミングがあるため、列が長くなってしまう時もあります。ただ、機械の調子が悪くなって味が落ちたものを提供したくはないので、皆さんにご理解いただきたいです」と、販売量だけでない味への思いを明かした。人員については7名で勤務し、大レースでもあえて人員は増やさない。経験豊富なチームでリズムよく進めることが、迅速なオペレーションの秘訣だと語った。
最も人気なメニューはやはり350円の「モカソフトクリーム」。ほかに、支持の高さから昨年レギュラーメニュー入りした「コーヒーゼリーモカ」と、スッキリした甘さが特徴の新作「抹茶フロートモカ」も人気を博しているそう。昨年通常時の17倍もの量を準備したという「コーヒーゼリーモカ」はもちろん、新商品の「抹茶フロートモカ」についても、海外需要の高まりから原材料確保に難しさはあるものの、在庫を増やして着実に準備している。
店舗は東京競馬場フジビュースタンド2F、32番柱付近にあり、混雑時には店舗の正面左側、メモリアル60スタンド方面に列を形成する。列整理の工夫について伺うと、なんとファンのマナーが大きいそう。列が長くなるとスタッフが整理には向かうが、「皆さん並ぶのに慣れてくださっていて、あえて声をかけなくてもわかってくださっています」と、耕一路を愛する人々の配慮に満ちたエピソードが。店のレジ横スペースには常連客からのプレゼントやぬいぐるみ、関係者のサイン色紙が多数飾られており、こちらも改めて長い歴史と人気を感じられた。
今年の日本ダービー観戦にはネットでの事前予約が必要だが、指定席・入場券合わせて約9.4万人が入場可能。「行列は長くても回転は速いかと思います。ぜひこの機会に沢山の方に食べていただきたいです」。6月1日に迫った日本中が熱狂する競馬の祭典、冷たくて甘い「モカソフトクリーム」に舌鼓を打ちながら、レースを楽しんでみてはいかがだろうか。