6月14日に開幕してから3週間が経った函館競馬。週末の競馬はもちろん、週中には東西のトレセンと同じように調教もしっかりと行われている。調教開始時間は朝の5時半から。これは馬場の開場時間で、それまでに厩舎スタッフはより早い時間から起床して、準備運動なども行っている。
函館競馬場内には厩舎地区があり、そこには2階にスタッフらが居住できるスペースのある馬房、そして助手寮なども存在。現在は美浦、栗東を合わせて約400人の厩舎従業員が生活する。函館に滞在する期間は人によってまちまちで、あらかじめ決まっている場合もあれば、担当馬の勝敗によって、それが長引いたり早まったりするパターンもある。
週末の競馬に向け日々ハードな仕事に励むそうした人たちの食を支えるのが、厩務員食堂だ。朝は7時半から13時まで営業しており調教を終えた助手、厩務員が足を運ぶ。食事はかなりボリュームがあり、大きな茶碗に入ったご飯を元気よくかき込む姿をよく見る。
この食堂を運営するのが株式会社パンジ。昨年まで運営していた別の会社から引き継ぎ、今年から運営に携わる。北海道内のいくつかの官公庁の食堂事業もしている会社で、代表の河口淳基さんを含めここでは6人ほどのスタッフが働く。夜の営業時間は16時半から19時で、昼夜を合わせると1日1170人ほどの利用者をさばいている。
気になるメニューとしては醤油ラーメン、玉子丼などが480円からあり、生姜焼き定食、カツカレーなども600円台で品揃えも豊富。こうした常設メニューは昨年の運営会社から引き続いているが、日替わり定食のメニューは河口さんが考案している。
厩舎作業はかなりの重労働とあり、「高校生の男の子が食べて満足できるような量を考えています。僕が高校生の時の記憶を頼りに」と、にっこりと笑う河口さん。「せっかくなので、なにか北海道っぽいものを入れられるようにしています」というように、塩
ジンギスカン定食など変わり種も提供されている。「注文が入って揚げます。鳥の癖がないような仕込みをしています。こだわっていますよ」というザンギ定食も人気メニューだ。
利用する厩舎関係者からは「3週間もいると結構函館のグルメに飽きるし、移動するのも大変。お金がありがたい」や、「朝が早いし、夜利用できるのもいい。おいしいしね」との声も聞かれた。取材中、営業時間を過ぎたあとに食堂に入ってきた助手さんもいたが、厨房に向かって「なにか出せるものも出してあげてください」と河口さんも、すっかり業務になれた様子だった。
厩務員食堂は通称“裏函”(ウラハコ)期間、全ての馬が退厩する8月の終わり頃まで営業。「これからも、みんなが食べたそうなものを和洋中に合わせて、飽きのないように食材を変えて提供できるようにしたいですね。やっぱり、おいしいといってもらえるとうれしいです」。まだまだ続く北海道シリーズ。こうした方々が、陰の陰から競馬を支えている。(デイリースポーツ・島田敬将)