◆第86回菊花賞・G1(10月26日、京都・芝3000メートル)
第86回菊花賞・G1(26日、京都)に、国枝栄調教師(70)=美浦=が前走で2勝クラスを快勝した
アマキヒを送り出す。来春に定年引退を控える現役唯一の1000勝トレーナーは、今回が最後のクラシック。牡馬での悲願達成へ「かすかな望みを託して頑張りたい」と、ゆかりの良血馬で大仕事を狙う。
JRA通算1112勝の名伯楽に気負いはない。来春に定年引退が控えている国枝調教師は、
アマキヒで挑む菊花賞が悲願の牡馬クラシック制覇へのラストチャンスとなる。母アパパネは10年の牝馬3冠を含むG15勝をマーク。半姉
アカイトリノムスメも21年の秋華賞を制するなど、自身が手がけてきたゆかりの血統での挑戦が楽しみな雰囲気だ。
「
アカイトリノムスメでもG1を取れたし、ブラッドスポーツで自分が管理した馬の子が活躍してくれるのはファンも我々も楽しみなことだからね。俺も先がないから、最後のひとつにかすかな望みを託して頑張りたい。ここらあたりで夢を見させてほしいよね」
2走前の青葉賞は5着に敗れて日本ダービー出走はかなわなかったが、前走の阿賀野川特別で古馬相手に完勝して一気に視界が開けた。道中は中団から追っつけながら追走も、そのまま直線でも長く脚を使って豊富なスタミナをアピールした。
「一番よかったのは圭太(戸崎騎手)がすごい手応えを感じて、『長い距離はすごくいい』と言ってくれたこと。夏にしっかりして体は実が入ってきた。折り合いは問題ないからね」
長丁場の菊花賞へトレーナーは期待を膨らませる。その思いは担当する福田助手も一緒だ。母アパパネをはじめ厩舎に所属した兄姉も任されてきて、「みんなお母さんに顔が似ていてそっくり。どの子も勝ち上がって能力がありますよね。(
アマキヒは)脚長でスラッとしていて本当に見た目がいい馬です」と一族の底力に期待を込める。
レースセンスはもちろん、長距離向きの体形や心肺機能で大仕事の予感がしてくる。国枝師は「
バランスが良くて格好が一番いい。きょうだいでも一番いいよ」と素材の良さにほれ込んでいる。手塩にかけた夢のつぼみが、菊の舞台で大輪の花となる。(坂本 達洋)
◆国枝 栄(くにえだ・さかえ)1955年4月14日、岐阜県生まれ。70歳。89年に調教師免許を取得し、90年に美浦で開業。3冠牝馬の
アパパネ、
アーモンドアイなどを管理し、JRA通算9410戦1112勝。重賞はG1・22勝を含む70勝。