【競馬人生劇場・平松さとし】
今週末、東京競馬場で
ジャパンC(G1、以下JC)が行われる。今年、このレースに出走する唯一の外国馬が
カランダガンだ。キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)など現在G1・3連勝中で、今年の欧州カルティエ賞年度代表馬にも選ばれた大物である。
今週、私は毎朝東京競馬場を訪れて調教を見た。その際、JRA職員とおぼしき若い人が「これだけの馬が来るのは史上初めてと思う」と言っていた。確かにそう言いたくなるほどの実力馬だが、かつては同等の大物が何頭も来日していた。年度代表馬でいえば
ユーザーフレンドリーや
ウィジャボード、
オーストラリアで満票選出された
レッツイロープなど。第2回の時は北米の前年の年度代表馬(結果的に2度選出される)
ジョンヘンリーが来日し、驚いた。さらに
トリプティクやモンジューなどの名馬が参戦したこともある。
彼らは日本で敗戦を喫したが、中にはしっかり結果を残した馬もいる。英国馬シングスピールは96年のJCを制し、北米での活躍も評価されエクリプス賞最優秀芝牡馬に輝いた。翌年にはダートのドバイWC(G1)も制した。また、97年のピルサドスキーはカルティエ賞最優秀古馬として来日し、JCも勝った。
このシングスピールとピルサドスキーを管理していたのが、M・
スタウト調教師(現在は引退)だ。英王室から“サー”の称号を授かった伯楽は、この2頭でJCを連覇した際「日本での勝ち方が分かったよ」とある人物に語ったという。
そう言われたのは英国ニューマーケットで4年間を過ごした後にJRA入りして開業した、藤沢和雄元調教師。このひと言にはさすがに唇をかんだという。
しかし、そこで黙っていないのが日本のトップ調教師だ。
スタウト師がJCを連覇した翌98年、藤沢師はタイキシャトルで仏ジャックルマロワ賞(G1)を制した。そのレースで2着となったアマングメンは
スタウト師の管理馬だった。勝利後、藤沢師は
スタウト師に向かって「欧州での勝ち方が分かったよ」と告げたそうだ。 (フリーライター)