“夏の上がり馬”。ひと夏を越して大きな変ぼうを遂げた馬に使われる言葉で、まさに関東馬のフェデラルホールが当てはまる。菊の舞台ではこの手のタイプの活躍が目立つ。今年で73回目を迎えるが、春のクラシックに出走せず、頂点に立った馬は計19頭。古くは38年のテツモンに始まり、過去10年でも02年ヒシミラクル、04年デルタブルース、06年ソングオブウインド、09年スリーロールス、10年ビッグウィークが春の勢力図を塗り替えた。実績だけでは語れない。
デルタブルースと同じく、九十九里特別を勝ち上がり、駒を進めてきた。今が旬のステイゴールド産駒。同じ父を持つ昨年の覇者オルフェーヴルがそうだったように、長距離を得意としている血統。初勝利は皐月賞の翌週と時間がかかったが、続く500万下、1000万下と3連勝中。勢いに乗っている。
どの馬も未経験の淀3000m戦。中川師は「テンから行かせても押さえることができるし、折り合いの心配もいらない。距離の問題はない」と長丁場の舞台を歓迎する。前走は1000万下とはいえ、2500m戦で古馬相手に堂々のパフォーマンスを見せた。パートナーの吉田隼も「まだ緩いところはあるものの、ここにきて体つきは良くなっている。折り合いはつくし、距離はあっていい。本番が楽しみ」と確かな進化を感じ取っている。
ステイゴールド産駒は3冠馬オルフェーヴルを筆頭に、その全兄ドリームジャーニーやナカヤマフェスタと、本番に強いイメージがある。その反面、激しい気性があだとなる馬もいるが、「ステイゴールド産駒にしてはうるさい面はなくおとなしい」と指揮官は指摘する。注目は同産駒の皐月賞馬ゴールドシップが集めているが、その前に立ちはだかるのは、同じ父を持つ遅咲きのフェデラルホールなのかもしれない。
提供:デイリースポーツ