鞍上の横山典弘騎手はダービー馬の称号を手にした愛馬に「本当に強いです」と語った(撮影:遠沢好子)
JRA60周年のメモリアルイヤーの今年、ダービー馬の称号を手にしたのは、ワンアンドオンリーだった。橋口弘次郎調教師の悲願が達成されたその瞬間、約13万人が詰めかけたスタンドが歓喜に包まれた。(取材:赤見千尋)
◆1着ワンアンドオンリー
・橋口弘次郎調教師
「ありがとうございます。想像を絶する皆さんの反応ですね。ダービーってこんなすごいレースなんだと、改めて思いました。
うちは小さいながらも宮崎で生産農家をしていて、子供の頃からダービーの時はラジオにかじりついてました。初めて自分の厩舎からダービーに出走した時には、“毎年ここに来よう”と決意したものです。
振り返ってみると、よく20回もダービーに出走出来たなと思いますけど、やはりダンスインザダークの時は本当に悔しかったです。あの時は生意気なことを言ってましたけど、今だったら言えないですね(笑)。
追い込み一辺倒の馬みたいな感じでしたけど、今日は前が止まらない馬場で、最後方からでは間に合わないと思っていました。その辺りのことは、ノリさんがしっかりと察知してくれましたね。彼は感性で乗る人ですから、ポジションのことは言うまいと決めてました。いらんこと言ってはいけないので。
レースは絶好のスタートで、二の脚の反応も今日はよかったですね。直線では、追い合いになったら負けないと思っていました。今日は直線は長く感じなかったです。ゴールした瞬間は、もう言葉にならないですね。やはりダービーは別格です。
ハーツクライの仔で勝てて、とても感慨深いです。オーナーとは、もしここを勝つことが出来たら、来年はキングジョージに挑戦したいですねって、淡い夢を話していたんですけど、これからの活躍次第で現実の夢になりそうです。ハーツクライの仔でもう一度キングジョージに挑めたら…、挑戦出来るような成績をひっさげて行けたら、わたしの競馬人生は最高です!」
・横山典弘騎手
「勝ててホッとしました。オーナーと先生から、ダービーまで続けて乗ってくれというオファーをいただいて、とても有りがたかったです。今の、乗り替わりが当たり前の時代の中で、好きなように乗れたというか、ここまで考えながらレースで作っていくことが出来ました。
ダービーという、この場所に来ることがまず大変なのに、その中で最高の状態に持ってくるのは、さらに大変だったと思います。
今日はパドックで見るまで、入れ込みを心配していたんですけど、それなりに落ち着いていて、想定内でした。間違いなくスローになると思ったので、脚を余して負けるのは悔いが残りますから。スタートはこの前も出てますけど、今日は状態もよかったので、二の脚も速かったです。イスラボニータを見る形でレースが出来ましたけど、道中はペースが遅くて掛かってしまいました。自分としては、誉められた騎乗ではなかったです。よくあそこから、もうひと踏ん張りしてくれました。まだこれからの馬ですけど、それでダービーを勝つんですから、本当に強いですね。
橋口先生の、残り少ないチャンスで勝つことが出来てよかったです」
◆2着は1番人気イスラボニータ。
・蛯名正義騎手
「仕方ないですね。今日は枠の差です。内の馬場がいいので、相手はすんなりだけど、こちらは取りに行っての内。ペースも思い通りだったし、最後も巻き返してくれて、一生懸命頑張ってくれたんですけど…。また秋にリベンジしたいです」
・栗田博憲調教師
「少し掛かり気味だったけど、ジョッキーが上手く乗ってくれました。今回は立場が逆だったし、勝負所で一瞬目標がなくなってしまった場面もありました。
今後のことは、まだ考えていないです」
◆3着は、12番人気のマイネルフロストが頑張った。
・松岡正海騎手
「思い描いていたレースが出来ました。のりさんが行ったら、その後ろからついて行こうと思ってました。この世代で3番目に強かったですね」
◆5着トゥザワールド
・川田将雅騎手
「ゲートはいつも通り出てくれて、本当はもう少し前に行きたかったですけど、なかなか進んでいかなかったです。最後は盛り返してくれたんですけど…」
◆6着ショウナンラグーン
・吉田豊騎手
「スタートはまあまあ出てるんですけど、もうちょい潜り込みたかったですね。脚は使ってくれてるけど、まだ力は付ききってないです。これからの馬ですよ」
◆7着アドマイヤデウス
・岩田康誠騎手
「内で脚を溜めてたんですけど、直線で前が開いてゴーサインを出した時に、反応がちょっと鈍かったです。まだ幼いところがあるので、これからさらに成長してくれると思います」
◆8着ベルキャニオン
・戸崎圭太騎手
「前走よりも調子はよかったです。この短期間で、すごく良くなってくれましたね。途中で力んでしまったのが、最後出てしまったのかな」
◆9着スズカデヴィアス
・酒井学騎手
「スタートは思った以上に出てくれて、ある程度前めのイメージでいました。コーナーで躊躇する場面があって、本当は戸崎騎手のポジションにいたかったです。直線はジリジリですが伸びてくれたし、バテない脚を持っている馬。来年はもっとよくなると思います」
◆10着ワールドインパクト
・内田博幸騎手
「有力馬を見ながら行くことが出来ました。ただ、4コーナー回って手応えがなく、伸びきれませんでした。まだまだこれからの馬ですね」
◆12着レッドリヴェール
・福永祐一騎手
「雰囲気はよかったので、楽しみにしていたんですけど。外を回したくなくて、本当はイスラボニータの後ろにつきたかったんですけど、押して来る馬もいて、位置を取ることが出来ませんでした。いいチャンスをいただいたのに、申し訳ないです」
◆13着ハギノハイブリッド
・C.ウィリアムズ騎手
「3番手くらいにつけたかったんですけど、外から来られて行けなかったです。最後はガス欠のようになってしまいました」
◆14着サトノルパン
・小牧太騎手
「まだ荒削りなところがありますね。でも我慢させて、なんとかうまいこと乗れたと思ったんですけど、最後は苦しかったです」
◆16着トーセンスターダム
・武豊騎手
「すごくいい形だったので、最後は3頭の叩き合いになるかなと思ったんですけど、直線で左手前に変わった時に、内ラチの出口のところだったんです。まさかあんなことをするとは思わなかったです。若さが出てしまいました。あそこまでいい形だったので、もったいないし、悔しいです」