思い切りのいい騎乗もあっての重賞初制覇となったマイネルバサラ(撮影:高橋正和)
昼から青空が広がった浦和競馬場だが、前夜からの雨はかなりの量だったようで、馬場には水が浮くほどの状態。その不良馬場が少なからず影響を与える結果となった。
2番枠に入ったタマモホルンの逃げは予想されたとおりだったが、ほかに行く可能性のあった馬では、クリノスターオーはタイミングが合わなかったのか2馬身ほどの出遅れ、オールブラッシュは互角のスタートを切ったものの大外枠ゆえか無理には行かず中団6番手からの追走となった。
ヒガシウィルウィンは積極的に2番手だが、前がタマモホルンなら実質的に、後続を引きつけて逃げているのと同じ。3番手の内にバルダッサーレで、その外のマイネルバサラはすぐ前にヒガシウィルウィンを見る位置での追走。
3コーナー手前、ヒガシウィルウィンが先頭に立ちかけたところで、マイネルバサラが一気にとらえて先頭に立つと、そのまま差を広げて圧勝。マイネルバサラが57kgを背負って制した前走、準オープンの御陵Sも、この日以上に馬場一面に水が浮いた不良馬場だった。松山将樹調教師は浦和記念の朝、美浦にいて雨が降っているのを見て、「もっと降ってくれ」と思っていたという。たしかに御陵Sでは直線で馬群から抜け出す脚が1頭だけ際立っていて、そういう馬場状態でのパフォーマンスに相当手ごたえを感じていたのだろう。
勝ちタイムの2分8秒2は、中央との交流となった1996年以降で3番目に遅いタイム。もっともタイムがかかった2007年シーキングザダイヤが2分9秒7で、2番目が2011年ボランタスの2分8秒6で、ともに良馬場。ダートは湿った馬場になるとタイムが速くなるが、水が浮くほどの状態になると逆に時計がかかるようになることがある。マイネルバサラには、そうした馬場が味方したことに加え、ヒガシウィルウィンの動きを見て一気にとらえにかかった柴田大知騎手の思い切りのいい騎乗もあっての重賞初制覇となった。そもそも補欠から繰り上がりでの出走だっただけに、すべてがうまくいくというのは、こういうことなのだろう。
ヒガシウィルウィンは3、4コーナー中間でオールブラッシュとナムラアラシにも交わされ、一旦は4番手に位置取りを下げる場面があった。しかし4コーナーでラチ沿いから盛り返すと、3着のオールブラッシュに6馬身差をつけた。思い切った先行策から後続を引きつけて道中は脚を溜めていたヒガシウィルウィンに対し、オールブラッシュ、ナムラアラシは、中団からマイネルバサラが動いたときに、それをとらえに行くのに水の浮いた重い馬場で脚を使ってしまった、という差だろう。出遅れたクリノスターオーは向正面から追い通しで見せ場をつくれなかった。
ただ、6馬身、6馬身という着差は、芝でもダートでも、ドロドロの馬場になると能力差以上に着差がつくことがあり、その差がそのまま実力差ではない。
さて、ヒガシウィルウィンが2着に負けたことで、地方の年度代表馬争いがまた難しくなった。JBCレディスクラシックを制したララベルは、そのほかに勝ち星がないとはいえ、JpnIIIでも2着が2回。対してジャパンダートダービー勝ちのヒガシウィルウィンは、東京ダービーのタイトルと、今回のJpnII・2着がどう評価されるか。ヒガシウィルウィンにとっては、次走に予定している東京大賞典でアピールできるかどうか、ということになりそうだ。