ラストランで最高のパフォーマンスを発揮したリスグラシュー(撮影:下野雄規)
雨足が強くなるなか、大方の予想どおりアエロリットがハナを切った。すぐに単騎逃げの形に持ち込み、正面スタンド前で2番手との差を少しずつ広げていく。
1000m通過が58秒5とターフビジョンに表示されると場内がどよめいた。5馬身ほど離れていた2番手のスティッフェリオで59秒台の半ばほどか。
圧倒的1番人気に支持された、クリストフ・ルメールのアーモンドアイは中団の外につけている。
「スタンド前でちょっとスイッチが入った。2500mでいいペースで行ったら、リラックスしないと最後は疲れてしまう」とルメール。
ダミアン・レーンが乗るリスグラシューは、アーモンドアイの少し後ろのインコースで脚を溜めている。
「流れが速くなったので、ポジションよりもリズムを優先して乗りました。結果的に、予想していた前後のポジションを取ることができました」
向正面でアエロリットのリードは6、7馬身に広がっていた。
縦長になった馬群の最後方に武豊のワールドプレミアがつけている。
「決め打ちしました。溜めるだけ溜めて、4コーナーでの手応えもよかったです」と武。
3、4コーナーを回りながら馬群は急速に凝縮され、アエロリットのリードが小さくなっていく。
ラスト400mで後続がアエロリットを飲み込み、直線へ。
アーモンドアイが内の2頭に並びかけ、そこから突き抜けるかと思われたが、今ひとつ伸びない。
「フィジカルは大丈夫。状態もよかった。でも、ぐっと来るところがなかった。あまりリズムがよくありませんでした」とルメール。
伸びあぐねるアーモンドアイを尻目に、外からサートゥルナーリアが先頭にならびかけた。そのさらに外から、リスグラシューが猛然と伸びてくる。
「手応えがすごくよかったので、そのタイミングでスペースのあった外に出した。そこからは馬の能力に任せました」とレーン。
リスグラシューは、ラスト200mで先頭に並びかけると一さらに加速し、2着を5馬身突き放してラストランをグランプリ制覇で飾った。
「5歳の暮れになって、さらに成長し、進化していました。感無量です」
有馬記念初参戦で栄冠を手にした矢作芳人調教師はそう話す。
2着はサートゥルナーリア、3着はワールドプレミアの3歳勢。アーモンドアイは9着に終わった。
(文:島田明宏)