ダートグレート競走3勝目を飾ったサルサディオーネ(撮影:高橋正和)
昨年秋から今年にかけて牝馬のダートグレード3勝のマルシュロレーヌが帝王賞出走(8着)でここは不在となり、JRA勢はそれに次ぐ存在はどれか、という一戦。地方勢では、昨年ダートグレード2勝を挙げ、NARグランプリ4歳以上最優駿牝馬に輝いたサルサディオーネが、逃げるには絶好の1番枠に入った。
ほぼ互角のスタートから、そのサルサディオーネがすんなりとハナをとった。ウルトラマリン、リネンファッションもスタートダッシュはよかったが、競りかけてはいかず。リネンファッションは一瞬、行きたがる素振りを見せたが武豊騎手が抑えて3番手に落ち着いた。
今回はほかに何が何でもという逃げ馬がいなかったので当然ともいえるが、サルサディオーネはこれまで絶対にハナは譲らないというレースを続けてきたことが、他馬へのプレッシャーとして生かされているのではないか。逃げたい馬がいたとしてもサルサディオーネのハナを叩こうとすれば共倒れになってしまうことは、おそらく中央の騎手でもわかっている。
サルサディオーネは、ここ2戦でかなり厳しいレースを経験してきた。2走前のマリーンCも1番枠からすんなりハナをとったが、息を入れたい向正面でマドラスチェックに突かれ、3コーナー過ぎで並ばれてしまった。前の流れが厳しくなったぶん、かなり離れた6番手にいたテオレーマが楽に差し切ったという結果になった。かしわ記念は、そもそも相手が牡馬の一線級である上に、直後でワークアンドラブ、昨年のかしわ記念を逃げ切ったワイドファラオにマークされ、これも楽な流れではなかった。
それに比べると今回は、2、3番手のウルトラマリン、リネンファッションが突いてくるわけでもなく息の入るマイペースの逃げが叶った。マリーンC、かしわ記念とも、最後の2Fまでは一度も12秒台後半にラップが落ちることがなかったが、今回は4F目に13秒2とラップを落として息を入れ、次の5F目で11秒8とペースを上げて後続に脚を使わせている。雨の重馬場で逃げ有利の馬場もあっただろうが、それにしても上り38秒5という38秒台はメンバー中唯一の最速で、2着に6馬身差は圧巻だった。
7歳でも衰えはなく、マイペースで運べればこれだけ強いレースができるということをあらためて示した。ただ今年は金沢が舞台のJBCレディスクラシックとなると、苦手とされる長距離輸送に加え、中央時代も含めてこれまで10戦して一度も掲示板すらない右回りがカギとなりそう。
好位のウルトラマリン、リネンファッションにとっては、テオレーマの前走マリーンCの勝ち方を見ていれば、むやみにサルサディオーネを負かしにいくわけにはいかない。早めに勝負に行けば、確実にテオレーマに差されるという意識があったに違いない。そうした相手関係や展開的にもサルサディオーネには楽なレースになった。
リネンファッションは手応え十分に3コーナーで2番手に上がったものの、サルサディオーネにも十分余裕があった。ウルトラマリンはリネンファッションに交わされた3コーナー過ぎで手応えが一杯になり、これはさすがに距離だったか。
リネンファッションにクビ差まで迫って3着が、中央3勝クラスから大井に転入して4戦目のグランデストラーダ。7番枠ながらスタートしてすぐに内に進路を取り、先行3頭の直後ラチ沿い、川崎コースの絶好位につけた。すぐ前のリネンファッションに合わせて動いて最後まで食い下がった。牝馬のダートグレードでは、中央3勝クラス、南関東のB級上位で勝ち負けという成績でも好走する馬がたびたびいるだけに、これは本田正重騎手の好騎乗だった。
フェアリーポルカはマリーンCと同じ4着。期待されたテオレーマは6着。テオレーマはフェアリーポルカと同じような位置を進んだものの、直線半ばで脚が上がってしまいまったく能力を発揮できなかった。