◆ドバイ・シーマクラシック・G1(3月25日、メイダン競馬場、芝2410メートル)
野球の次は競馬が世界一だ! ドバイワールドカップデー(25日、メイダン)に出走した日本馬が、侍
ジャパンのWBC優勝にも劣らぬ快挙を成し遂げた。昨年の年度代表馬
イクイノックスは最後まで楽な手応えでシーマクラシック・G1をレコード勝ちし、世界に大きな衝撃を与えた。
強い、強い、強すぎる―。昨年の年度代表馬
イクイノックスが、海外での初陣をノーステッキで逃げ切り世界を驚がくさせた。勝ち時計の2分25秒65は従来のレコードを1秒も縮めるコースレコードのおまけつき。今の日本馬のレベルなら勝つことは想像できても正直、これほどまでに世界に強さを誇示するとは思わなかった。まさに世界を震撼させたと言っていい。
歓喜の渦の中で、侍
ジャパンがWBCで披露し定着した
ペッパーミルのパフォーマンスで世界一をアピールしたルメールは「最高の馬。自分のなかでのランキングがどんどん上がっている」。数々の活躍馬の背中を知る鞍上の手応えが、そのまま世界での更なる可能性を感じさせている。
レースは、まさかの逃亡劇。過去、逃げたことがなかったが、スタートを出ると父
キタサンブラックをほうふつとさせるように、スッとハナに立った。道中ではしっかり折り合い直線は持ったまま。後続が迫るどころか、ムチを振るうことなくどんどん突き放し、ラスト100メートルで鞍上が後ろを振り向く余裕。そのまま3馬身半差をつけゴールに飛び込んだが、脚質を広げての勝利。初のナイターに初の海外遠征も乗り越えて勝ったのはとてつもない価値がある。まさに天才だ。
昨年、3歳春のクラシックでは2着惜敗が続いたものの、秋になってルメールは「緩かったところが力強くなった。すごく成長してきた」と話し、その後、天皇賞・秋、有馬記念と古馬を撃破するまでになったが、4歳を迎えて、さらに
パワーアップ。レース前、木村調教師は「
バランスの面でまだ」と絶好だった昨年の天皇賞・秋までの出来に届いていないとの厳しい
ジャッジだったとはいえ、もしその状態で勝ったとしたら…。真の強さはいかほどかと想像するとワクワクしてくる。
この勝利で欧州の大手ブックメーカーは、凱旋門賞で同馬を1番人気に設定した。もちろん、シルクレーシングの米本代表は「日本に戻ってから先生と相談します。世界中のレースがオプションになってくる」と選択肢が広がったことを明言。
イクイノックスの可能性に限界はない。
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イクイノックス 父
キタサンブラック、母シャトーブランシュ(父キングヘイロー)。美浦・木村哲也厩舎所属の牡4歳。北海道安平町・ノーザン
ファームの生産。通算7戦5勝(うち海外1戦1勝)。主な勝ち鞍は22年天皇賞・秋、有馬記念(いずれもG1)。21年東京スポーツ杯2歳S・G2。馬主は(有)シルクレーシング。